2011年 09月 16日
検印紙が貼られた本 |
中田輝夫著『精神科医の落語診断』(青蛙房)という本を読みました。昭和61年(1986年)4月10日初版発行の本で、私が手に取ったのは昭和62年(1987年)9月10日3版(3刷のことだと思います)です。写真は見てのとおり奥付ですが、検印紙が貼られた本などめったに見ないので、なんだかうれしくなってしまいました。青蛙房(せいあぼう)という社名にふさわしくカエルの絵が印刷された小さな紙(検印紙)に、「3465」という数字がスタンプで押され、カエルの腹には著者のハンコが押されています。
ご存知ない方のために説明すると、検印紙というのは、それが貼られた本だけが、著者も販売を認めたまっとうな本であることの証となる紙です。これが貼られていない本は、たとえば出版社が著者に払うべき印税を払っていないとか、製本所がチョロマカして古本屋に売ったとか、そういうことなわけです。ハンコを押した枚数だけ本が売られるので、著者には出版社から支払われるべき印税が正確にわかるというわけです。
その昔は、編集者が著者の家に検印紙を持参し、著者がペタペタとハンコを押していました。家族や弟子が押したこともあったでしょう。たぶん編集者が代わりに押すことがいちばん多かったのではないかと思います。ようするに信頼関係があるわけですから、出版社も著者も、そんなことをするのがばからしくなったにちがいありません。出版社が告げる部数を著者が信用して承認するということになり、著者による検印は廃止されました。そう変わった当初、検印のない本は出版社がズルをしているように見えたので、奥付には、「著者との合意により検印廃止」という意味の断り書きが印刷されていたものです。このごろは、そんな断り書きも見ませんが。
検印はめんどうくさかったでしょうが、昔の本のほうが、どこか本としての威厳があったような気がします。
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by booktrain
| 2011-09-16 22:35
| ◎雑感・断想